ある加工業者さんから、お問い合わせを頂きました。
「当社で加工したワークの穴ピッチを測定してもらいたい」と。
しかし、そのワークは別の測定業者さんで測定済みとの事。
エンドユーザーさんは、図面の指示「600mm±0.01」の公差に対して、
実測値「600.015mm」なので再製作して下さいとの事。
加工業者さんの言い分は、
・機械は購入して1年も経っていない
・2日前から機械の上にワークをのせて十分な温度慣らしをした
・新品の刃物を使用
今までの経験を生かして、慎重に加工したので絶対に公差内に入っているはずだと。
測定業者さんの言い分は、
・カールツァイス社製の三次元測定機で測定した
・普段は22℃~23℃の測定室で、1日前から温度が21℃前後になるように空調を下げた
・もちろんワークも1日前から測定機の上で温度慣らしをした
このような、「加工者と測定者で言い分が違う」というお問い合わせをよく頂きます。
今回の件は、加工者と測定者が全く別の会社なので、後々の事はあまり気にしないのですが、
同じ会社内で、「加工部と測定部との言い分が違う」といったような問題が発生した場合は、
お互いが後でピリピリとした雰囲気にならないか心配になってしまいます。。。
若干話がそれてしまいましたが、
まず、新品の加工機といっても様々なメーカーの加工機がありますし、ポテンシャルも様々だと思います。
もちろん、精度の高い機械であっても加工者の腕によっては、加工精度が落ちる事もあるでしょうし、
高精度な加工機でなくても、加工の仕方によっては公差内に仕上げる事も可能だと思います。
当社でも加工部がありますし、YASDAのジグボーラ―も保有しておりますので、
「精度を出す加工の仕方」というものも心得ております。
ですので、加工業者さんにどのように加工をされたか確認してみた所、
機械はともかく、精度が出るような加工をされていたので、問題のワークを当社で再測定する事になりました。
またまた話をそらしますが、
当社では測定室を20℃~22℃になるように空調管理しておりますが、
真夏の猛暑日であったり、大勢の方が見学に来られたり等々、
様々な要因で測定室が23℃~24℃になってしまいます。
当社が保有するカールツァイス社製三次元測定機は「PRISMO」というタイプです。
このタイプの測定機が、最大のポテンシャルを発揮出来る温度というのが、18℃~22℃なのです。
「室温が若干上がり気味だから、前日から温度を下げておく」
これは半分正解で半分間違っております。
正しくは、「最適な温度を保ち続ける」です。
メーカー校正の際でも、三次元測定機の大きさにもよりますが、
大体2~3日温度慣らしをしてから校正作業にはいるとの事です。
当社でも超精密測定をする際は、3~5日程は三次元測定機を慣らします。
ワークの温度慣らしももちろん重要なのですが、三次元測定機自体の温度慣らしが重要なのです。
というのも、三次元測定機のスケールは「ガラス」なのですが、
三次元測定機は他にも「石」や「セラミック」等、様々な物質が組み合わさっております。
それぞれ熱膨張率も違いますので、十分な温度慣らしが必要なのです。
最終的には、しっかりと校正されたブロックゲージを測定して、
その値が本来の値とどう違うかの確認も必要です。
今回は、相手の測定業者に納得をさせられるだけの資料が必要だということで、
「超精密測定」での依頼となりました。
さて、ワークと三次元測定機の十分な温度慣らしを終え、当社の「三次元測定機社内校正専用機器」である
1000㎜のブロックゲージで精度の確認をしたところ、(メーカー測定値=1000.001)
X軸方向に置いて測定した値が、1000.001で、Y軸方向に置いて測定した値が、1000.006でした。
メーカー測定値と全く同じ値が出たX軸方向に、ワークの600㎜ピッチ穴が測定出来るようにセットし、
測定をしたところ、「600.003」になりました。
これには立ち合いに来られてた加工業者さんもびっくりされておりました。
「最初に測定した値と「0.012㎜」も違う結果を、元の測定業者とエンドユーザーに自信を持って説明できる」
と喜んで頂けました。
高精度の三次元測定機であっても、その「扱い方」によって大きく変わってしまいます。
「自信を持って加工をしたのに、三次元測定機で測定したら公差が外れていた」
このような問題がありましたら、是非当社にご相談下さいませ。
「測定結果の独り歩き」を防ぐ「ノウハウ」が当社には御座います。
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